LITTLE
 博美は、もう何人かと付き合い別れを繰り返している。
 啓太郎なんて、付き合っている今の彼女と同居しているのだ。
 皆、私から離れていく……皓も……。
「嫌だよ……皓」
 ソファにうつ伏せになって目を瞑る。
 皓の事が頭に思い浮かぶ。
 嫌だ、皓の事が頭から離れない。
 彼の笑顔、泣き顔、可愛い一面、かっこいい一面、色々な彼。
 それらが思い浮かぶ度に切なくなって、溜まっていた涙がこぼれ出す。
「嫌だ……皓、どこにも行かないで……。私の所にいて……。私、寂しいの……皓」
 小さな声で呟き続けた。

 どれほどの時間、ソファに寝そべっていたのだろう。
 外からの陽の光は、あまり変化がない。
 私が思っていた程、時間は経っていないようだ。
 こんな事ばっかりしていられない。
 とりあえず体を起こそう。
 ゆっくりとソファから起きあがった時、ふと、リビングの電話が鳴りだした。
 慌てて駆け寄り受話器を取る。
 街の総合病院の脳神経科の先生だ。
 声の出せない麗太君のかかりつけ医でもある。

 麗太君を私の家に預ける様に計画したのは、麗太君のパパだった。
 仕事上、忙しい立ち位置でもあった彼は、麗太君を私に預け、会社近くのアパートに居を構えたそうだ。
 きっと、妻である楓と親しかった私を信頼しての事だろう。
 事故を起こした相手との事に関して、あの時は麗太君のパパも忙しかった様だし。
 麗太君を脳神経科に通わせる事は、彼からの約束だった。
 だから私は麗太君を預かってすぐ、彼を専門のかかりつけ医のいる病院へ連れて行った。
 診断結果は一時的なショックやストレス。
 今の生活に少しずつ慣れさせる事が必要なのだそうだ。
 事故の時の事を思い出させる様な事は絶対にしてはいけないし、事故を起こした相手、そういった人物にも合う事は厳禁らしい。
 麗太君はカウンセリングの為、一週間に一度、病院へ通う事になっている。
< 103 / 127 >

この作品をシェア

pagetop