LITTLE
 住宅街や商店街とは逆方向へ。
 目的地は決まっていた。
 あの日、毎年、皓と星を見たあの土手だ。

 コンクリートで舗装された道が、土手の上に真っ直ぐ伸びている。
 人の気配は全くしない。
 当然だ。
 誰しもがお祭りへ歩を運ぶ中、私だけがここにいるのだから。
 辺り一面は、どこからか漏れている人家の明かりや、向こう側に見える花火や祭りの明かりで、かろうじて足元が見える程度の明るさを保っている。
 街灯。
 祭りの提灯。
 花火。
 人家。
 そんな街に活気を溢れさせる強い光達の中で、儚く街を照らしている光があった。
 見上げればそこにある無数の光。
 夜空に輝く星達だ。
 毎年、この場所で、欠かさず皓と見上げていた星々。
 皓は、やっぱり来ない。
 今年は、私一人だけで星を見る事になっちゃったなぁ。
 皓の事が頭に浮かぶ。
 まただ。
 目蓋が熱くなってくる。
 彼の事を考えると、いつもこうだ。
 目を瞑っても、隙間から涙は溢れ出て来る。
 泣き出す私。
 そんな私を星々は容赦なく照らす。
 溢れ出て来る涙を、私は人差し指で少しずつ拭い続ける。
「皓……」
 その名を囁き続けて。

「香奈」
 ふと、聞き覚えのある声が聞こえた。
 皓だ。
 間違いない。
 この声の主は皓だ。
 どこ?
「皓、どこにいるの?」
 涙でぼやけていて、その上暗くて前がよく見えない。
「まったく香奈は、しょうがない奴だなぁ」
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