LITTLE
 こんな家、もう帰りたくない。
 でも、私は一人じゃ生きていけない。
 だから家にいる時間を最小限にする。
 私には、それしか出来なかった。
 早朝の通学路には、私の様にランドセルを背負った小学生なんて一人もいない。
 早朝の静かな街。
 夏が終わった後の、涼しい十月中旬の空気。
「学校……行きたくないなぁ……」
 学校へ行っても正直、楽しくない。
 優子もいるけど……何よりも私の事を良く思う連中がいるから。

 皆が学校へ登校する時間を、隠れるように学校近くの廃れた公園にある、土管型をした遊具の中で過ごした。
 一時間目が始まったであろう頃、隠れるのも飽きたので、こそこそと街中をテキトウにぶらついているうちに、駄菓子屋に辿り付いていた。
 入るか迷ったけど、結局はドアを開けて中に入っていた。
 ドアの音に気付いたのか、奥の部屋からおばあちゃんが来た。
「おや、マミちゃん。今日は学校じゃなかったのかい?」
「サボって来ちゃった」
 私は笑顔でそう言った。

「そうかい。やっぱり気の合わない友達も、クラスに一人や二人はいるものさ」
 私の学校での境遇。
 家での事。
 綾瀬との事
 この際だから全てを打ち明けた。
 私のどんな話にも、おばあちゃんは驚く事もなく、いつも通りの穏やかそうな表情で聞いてくれた。
「うん。だから今日は……学校をサボって来ちゃって……。こんな気持ちの良い日だからかな。なんか、学校へ行って嫌な気分になるのが勿体なくて」
「まだまだ若いんだから。今のうちから、なんでもするといいよ。ほら、サイダー飲みな」
 冷蔵庫から出した瓶のサイダーを私に手渡す。
「あ、お金」
 おばあちゃんは首を横に振る。
「お金はいらないよ。お代はマミちゃんのお話って事で、勘弁してあげるよ」
 サイダーを飲み終えた後、駄菓子屋を後にした。
 そういえば、マルはどうしたんだろう。
 帰り際、おばあちゃんは私に言っていた。
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