LITTLE
「僕の職業は、この街の小学校の先生なんだ。でも三週間程前、持病が発覚して手術を受ける事になってね。長い闘病生活になるだろうし、どのみち今日を最後と決めていたんだ。それにもしかしたら、口裂け女なんていなくて良かったのかもしれないしね」
諦めきっている。
そんな表情をしているオジサンを、皓は真っ直ぐに見据えた。
「あの……俺、何の取り柄もない只の高校生ですけど……こんな事、誰かに言える立場じゃないかもしれないんですけど……。オジサンのやってきた事、絶対に無駄な事ではないと思います」
彼は私達に笑顔で「ありがとう」とだけ言い残し、公園を去って行った。
家族で過ごす、最も幸せである筈の時期に娘を失った彼の苦しみは、その時の私や皓には到底、想像も付かない事だった。
それでも私達は、いずれ知ってしまうのかもしれない。
いや、きっと避けては通れないのだ。
=^_^=
「そんな事があったのか」
啓太郎は数本のお酒の瓶とグラスを並べながら、怪訝そうに呟いた。
「そう。思えば、皓が人とは少しずれた考え方を、本格的に抱く様になったのは、その頃からだったかも」
「正統派ヒーローよりもアンチヒーローの方に肩入れするっていう、皓の考え方か。確かに、あいつが言ってた事も一理あるな。悪役が必ずしも本当の悪だとは限らない」
「ていうより皓は、人を庇う事を覚えたんだと思うわ。他人のミスを何もかも自分で抱え込んで、庇って……自分だけが悪者になって」
高校時代から今に掛けて、そんな事を繰り返してきたから、家を出て行くまでの最近の彼は、精神的にボロボロだった。
それでも優子の前では、自分の惨めな姿を見せまいと強がって、あの子が寝た深夜には、毎夜の様に私に甘えていた。
互いに身を寄せ合い泣く日々。
私達の間に確かにいた子、優太。
その記憶が皓の頭から消えない限り、きっと彼が心から笑える日は来ない。
それでも、私達は優太の事を忘れてはならない。
だから後に産まれて来た娘に優子と名付け、決して優太を忘れる事のないよう胸に留めて、日々を過ごしてきた。
皓から優太の記憶が消える日はない。
諦めきっている。
そんな表情をしているオジサンを、皓は真っ直ぐに見据えた。
「あの……俺、何の取り柄もない只の高校生ですけど……こんな事、誰かに言える立場じゃないかもしれないんですけど……。オジサンのやってきた事、絶対に無駄な事ではないと思います」
彼は私達に笑顔で「ありがとう」とだけ言い残し、公園を去って行った。
家族で過ごす、最も幸せである筈の時期に娘を失った彼の苦しみは、その時の私や皓には到底、想像も付かない事だった。
それでも私達は、いずれ知ってしまうのかもしれない。
いや、きっと避けては通れないのだ。
=^_^=
「そんな事があったのか」
啓太郎は数本のお酒の瓶とグラスを並べながら、怪訝そうに呟いた。
「そう。思えば、皓が人とは少しずれた考え方を、本格的に抱く様になったのは、その頃からだったかも」
「正統派ヒーローよりもアンチヒーローの方に肩入れするっていう、皓の考え方か。確かに、あいつが言ってた事も一理あるな。悪役が必ずしも本当の悪だとは限らない」
「ていうより皓は、人を庇う事を覚えたんだと思うわ。他人のミスを何もかも自分で抱え込んで、庇って……自分だけが悪者になって」
高校時代から今に掛けて、そんな事を繰り返してきたから、家を出て行くまでの最近の彼は、精神的にボロボロだった。
それでも優子の前では、自分の惨めな姿を見せまいと強がって、あの子が寝た深夜には、毎夜の様に私に甘えていた。
互いに身を寄せ合い泣く日々。
私達の間に確かにいた子、優太。
その記憶が皓の頭から消えない限り、きっと彼が心から笑える日は来ない。
それでも、私達は優太の事を忘れてはならない。
だから後に産まれて来た娘に優子と名付け、決して優太を忘れる事のないよう胸に留めて、日々を過ごしてきた。
皓から優太の記憶が消える日はない。