聖戦物語 奇跡が紡ぐ序曲~overture~

第二楽章

 ぐしゃりと握りつぶされた書類を見つめ、次に彼の人を真っ青になって見つめる推進派、安堵したように肩をなで下ろす保守派、我関せずの体を貫き通す中立派。


 反応は様々だが、不穏な空気を纏う彼の人を止めようとするもの―――それ以前にできるもの―――は誰もいなかった。


「……それで? 俺の娘をどっかの研究のモルモットにするとかどういうふざけた了見です?」


 副校長の招集で集まった会議の場、突然乱入したのは今どういう処分を下すかの議論を繰り広げていたファーストの少女、サリアの実父であり、この学院の理事長の座に収まるゼフロスだった。


「他にも、特殊例としてどっかに幽閉して監視対象にするとか、国王に献上するとかろくでもない案ばっかりですよね。―――校長が耄碌したからってここまで好き勝手出来るほど偉いんですか、副校長ってのは」


 愛娘のことになると、餌のいらない猫をどこかに追いやって凄むのだから、本当に教師やらせていいのかと思われるのだが、時折教師らしく生徒たちに授業を行う姿勢は真面目で、生徒たちに人気、更にはそれを受けた生徒たちの大半が成績があがっているので、文句など言えるはずもない。


 しかし、それでも彼の娘の特殊な素養を鑑みると、と前置いて、副校長は重々しく且つたどたどしい口調で言葉を放った。


「……か、彼女は特殊な魔法使いとしての監査対象に適っている。だいたい、彼女の魔法使いとしての素養を伸ばすには、そういった教師がいないこの学院では伸ばすことは難しいだろう」


「だからって娘が人体実験とか知らぬ間にさせられる状況を俺が甘んじて受けるほど冷酷に見えますか? むしろ今、俺はあんたと一度向かい合って腹を裂いて会話したいんですが」


 真っ黒な部分をできるだけ大きく切り開いて―――といったような言葉を裏に潜めたような台詞に顔をひきつらせた副校長に、関わるまいと視線を逸らした教師たち。




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