彼×私×彼女の事情
「そこから交番に連れていかれて取り調べスタート。大声で歌っていた理由を聞かれて泣きながら答えたの。その日あった辛い出来事を誰かに聞いてほしかったから」


そしてお義母さんはグラスに入っていたシャンパンを一口のみ気合いを入れ直したのか再び話はじめた。

「私は色んな男性からアプローチをたくさんされたけど選んだのはただ一人。その人はお医者さんの卵でまだ研修医。研修が終わって立派な医師になって結婚する約束までしてた。私は彼にすべて捧げ尽くした。彼も私に全ての愛情を注いでくれて何もかも上手くいって幸せだった。でもね……時代が時代だったから仕方なかったのね彼に縁談話が持ち上がったの。もちろん彼は私を選んでくれて家族にも立ち向かってくれた。駆け落ちすら考えたわぁでも彼は家族を絶対に説得するって聞かなかった。そうじゃないと君を本当の意味で幸せに出来ないって。結婚してもどこか心の中に後悔を残してしまうからっていうの。私は真っ直ぐに汚れのない心で話してくれた彼に一生ついていく覚悟を決めたわぁ。その日から認めてもらうために何度も彼のご両親の所にも行った。でもね……彼は最終的に縁談相手を選んだの。最初は受け入れられなかったわぁ。何度も彼と話して説得したけどダメだった。最後の説得って思って行ったときに彼も同じ気持ちだったようで全てを話してくれたの。彼の実家は病院で経営は火の車だから相手の融資が必要なこと。相手の女性は初恋の相手で私と付き合う前に付き合っていた人。そしてその女性は自殺未遂をするほど彼を愛していて彼は彼女の弱さに自分が必要で守ってあげたいと思ったと話されたわぁ。私は自分じゃなくても幸せにできるって。傷付くでしょ?私も彼女と同じなのに。そして明日入籍するって言われて終わったことを実感したわぁ。だから飲んで飲んで忘れたかったの。でも酔えないのよねぇ~すぐ思い出して辛くなるから紛らわすために大声で歌って歩いたの」
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