+夜に奏でる恋の歌+
隣で興奮している凛夏。
私は声には出さなかったけど
内心は興奮していた。

「んじゃ凛夏!!中入ろっか!」

「そうね〜お腹減ったし!今日は
女捨てて食うぞ〜っ!」

「凛夏…声が大きい…」

そして私達は旅館の中に入った。
「すみませ―ん」

肝心の受付の人がいなかった。

「もぉ〜なによー。せっかく早めに来たのにー」

凛夏はムッとした顔で、
私を見る。

「この旅館壊れるくらい大声
出してよ」

「え!?迷惑だよ!」

「お願いします!!お腹がすいたんだ〜っ!早く〜」

凛夏は本当に乙女なの?

そう疑問を抱きながらも
仕方なくひきうけることにした。
深呼吸をすると、

「誰かいませぇんかぁぁぁっ!」

「ちょっ…椎奈っ…」

「誰かいませぇんかぁぁぁっ!」

「もう…っ…止め」

「誰」

―空気が変わったー

我を忘れて大声で叫んでいた私は声のした方向を向いた。
そこには一人の少年が
立っていた。

―ウゴケ、ナイ。

漆黒のさらさらとした髪。大きなアイスブルーの瞳。
この世のものとは思えないほどの美しい顔立ちをした少年が
そこにいた。

凛夏もぽかんとした顔で
その美しい少年を見ていた。

その少年は表情ひとつ変える
ことなく口を開いた。

「何か用?」
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