+夜に奏でる恋の歌+
「えっと、今日宿泊予定の者です」
私は慌てて口を開いた。

「今日宿泊予定の…?」

一瞬少年の表情が変わった。



「―…?」

が、それは一瞬の出来事で。

「なんだ、客?今から父さん
呼んでくるから」

納得したような表情で少年は
言うと、温泉の方向へ
走っていった。

「…………」

「すごい綺麗な男の子だね!!」

凛夏はまた興奮している。

確かに綺麗な少年だった…。
でも…彼はー……

彼はー…

「おぅ、予約していたお嬢ちゃん逹か。すまんな」

温泉の方向から
声がした。

あの少年ではなく、
どこにでもいそうな小太りの
おじさんだった。

「さあ、案内しよう。君たちの
部屋は三階で…鍵は…」

おじさんに誘導されて乗った
エレベーターで
おじさんが一生懸命説明してくれているのにも関わらず、

私の頭の中は途中で消えて
しまったあの少年で
いっぱいだったー。
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