+夜に奏でる恋の歌+
皆がビックリした顔で私を見た。
「なんだ、浜風!静かにせんか!」
だ、だって。

どうして。

どうして、あの人が―…

「ああ、黒河くん。すまなかった。自己紹介してくれ。」

そう先生にうながされた転入生が口を開いた。

「親の都合でこちらに来ました。黒河羽未です。よろしく。」

さらさらとした漆黒の髪を揺らしながら頭を下げた少年は…

紛れもなくあの旅館で会ったあの美少年だった。

『やっば!超かっこよくない!?』

『かっこいい〜』

私が転入生の登場に呆然としていたら女子の黄色い声が聞こえてきた。

「じゃあ席は…桜田の隣な」

先生が校庭側にいる桜田さんの隣の席を指差した。

黒河くんが先生の言葉に軽くうなずき、桜田さんの隣の席へと歩いていく。

黒河くんが私の席を通りすぎた時―…黒河くんの顔がはっきりと見えた。

(あれ?)

(瞳の色が違う…?)

前始めて会った時はたしか、瞳の色はアイスブルーだった。

しかし今の黒河くんの瞳の色は普通の茶色だった。

(カラコンでもしてたのかな…?)
黒河くんが桜田さんの隣に座る。私とは通路を挟んで隣だった。

黒河くんが桜田さんの隣に座った瞬間、桜田さんの頬がピンク色に染まった。

『ちょっと桜田さん〜ずるいよ』
『な、何いってんの!』

桜田さんが恥ずかしそうな声を出したが、私はそんなことどうでもいい。

私はちらりと黒河くんを横目で見た。けれど私に気づいた様子はなくて。

冷たい瞳で黒板を見つめていた。
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