+夜に奏でる恋の歌+
一時間目と二時間目に予定されていた始業式が終わり、皆より遅れて教室に入った私。

いつもに増して騒がしい教室。

(?)

一番後ろの窓側から二番目の席の周りにはなにやら人だかりが出来ていた。

(ああ、なるほどね…)

よく見てみると黒河くんの周りには、同じクラスメイトや他クラスの女子がたくさんいた。

皆頬を同じように赤らめて、黒河くんを質問攻めにしていた。

「ねえ、黒河くんはどこから来たのぉ?」

「…イギリス」

(イギリス!?)


黒河くんが答えた瞬間、きゃあと声が上がる。

「ねぇ、メアド教えてよっ!」

「…別にいいけど」

黒河くんが瞳の色変えずに答えているというのに、女の子達は全く動じない。

「やったあ♪ありがとぉ!」

隣のクラスの美少女、金井さんが甘ったるい声を出した。

(…どこからあんな声が出るんだか)

普段は強気の金井さんさえ、黒河くんを見て頬を赤らめていた。

(みんな顔だけじゃん)

呆れてその光景を見つめていると、凛夏が教室に入ってきた。

「皆ー!!風紀検査あるから席についてー」

凛夏が黒河くんの周りにいた女子を横目で睨んで、

「ほらほら、皆も早く座って!金井さん達も早く帰って!」

と、言った。

金井さんは物凄い形相で

「なによっ!さっさと出ていくわよ!」

(こ、怖―っ!)

私は金井さんが放つ黒いオーラに圧倒され、身震いした。

しかし凛夏本人は涼しい顔をして教卓の方へと向かっていった。

(さすが凛夏…)

凛夏の気の強さに感心していると
「じゃあ皆まず生徒手帳出して〜」
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