黒い羽根




 信号が青に変わり、車は走り出す。

 見慣れた世界。

 けれど、新しい色を持つ世界。

 僕は進む。

 日々は廻る。




 窓から見上げた空は嘘みたいに青く、やけに綺麗で。

 憂鬱さの欠片も見当たらぬ澄み渡る視界には、たゆとう白い雲。

 そのどこか呑気で気楽な風情が誰かさんを思いださせて……。




 ずっとずっと遥か、天上で飛び回るその姿が――




 見えずとも、鮮明に脳裏に描かれていく。




< 110 / 114 >

この作品をシェア

pagetop