吸血鬼は淫らな舞台を見る episode ι (エピソード・イオタ)
視力が役に立たない状態で、誰かの声が聞こえた……ような気がした。
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「どこに行く気なの!」
女が呼び止め、腕を掴んでいる。
場所は玄関ホール。
自分がシータと舞台の上で話をしていたのか、それとも肖像画がある部屋で食事をしていたのか、ついさっきまでのイオタの記憶は混同していた。
「夢遊病者のようにまた街を彷徨うつもり?」女は責めるような口調で問いただす。
「ちょっと目を離すとこうなんだから」