吸血鬼は淫らな舞台を見る episode ι (エピソード・イオタ)
「ご、ごめん……なさい」
意識的に迷惑をかけたわけじゃないが、口は悪くとも心配してくれているのは間違いないようで、イオタは謝った。
「今度から部屋にカギでもかけておくしかないかしらね」
女は自ら捻り出した対策を独り言のようにこぼす。
「ぼくの名前はイオタなの?」
イオタは舞台でシータと話した世界が現実だったのか、確かめるために訊いた。
「どうして本当の名前を知ってるの?」
女はびっくりした表情でイオタを見詰める。