吸血鬼は淫らな舞台を見る episode ι (エピソード・イオタ)
一人の隊員がピンマイクに囁き、ヘルメットの耳の辺りを片手で押しながら頷くと「半径三〇メートル以内にいることは間違いない」と周りに声をかけた。
隊員達はそれまで下に向けていた銃口を水平に固定し、脇を締めて構え、緊張感を走らせる。
黒衣という部隊の人数はざっと見て十数人。
一度に相手にするとなれば、困難な数。
一人ずつ地道に片付けていくしかない。
アルファは誘い込むベストな場所を模索するため、その場を離れようとした。
しかし、僅かに踏んでしまったガラス片と靴底の擦れる音がやけに大きく響いてしまう。