吸血鬼は淫らな舞台を見る episode ι (エピソード・イオタ)
病院と思しき建物の裏手に差し掛かったとき、アルファの口元が怪しく片側につりあがった。
足幅しかないブロック塀によじ上り、ビルとビルの隙間を練り歩き、長さが四〇メートルほどの中間地点で足を止める。
黒衣部隊は縦一列になって追ってきたが、先頭と二、三人目との距離が開いていた。
アルファは先頭の隊員と対峙した。
トリガーにかかっている人差し指が動くか動かないかの僅かな瞬間を狙い、身を屈め、一気に距離を詰める。
パパパツ……と銃口から火花が散ったが、アルファの右手によって銃口は夜空に向けられた。