吸血鬼は淫らな舞台を見る episode ι (エピソード・イオタ)
赤い革が張ってある観音開きのドアは手で軽く押すだけで滑るように開く。
緩やかなカーブを描き舞台をどの位置からでも見やすく配置された観客席、二、三階は桟敷席、天使が笑顔で青空を飛んでいるフラスコ画の天井からシャンデリアがぶら下がっている。
ドアが閉まると劇場内が闇に包まれた。
「こんなところにこんなものを造るなんて、人間はどうかしている」
アルファは愚痴っぽいことを言いながら、傾斜のある階段を下り、舞台の方までいくと、どこで黒衣部隊を待つべきか思案していた。
すると、壁に等間隔に並ぶブラケットランプが脅えるように明滅を繰り返してから、黄金色の落ち着いた明かりを点す。