吸血鬼は淫らな舞台を見る   episode ι (エピソード・イオタ)


飲んだ血の量で目覚める時間が左右される場合と、複数で劇場内にいるときに一人が目を覚ますとほぼ誤差なく他の連中も現実の世界へ戻ってくる場合もあるようだと女が教えてくれた。


ただ最後に、あなたの力のせいかもね、とも付け加えた。


図書館のような部屋で気を失っていたはずのシータがすぐにやってきた。


「もう少し遅かったら出血多量でぼくはイオタ君の記憶の中で埋没していたかもしれない」


そう言いながらシータは拘束具のベルトを緩め、イオタの手と足を自由にする。


シータに大鎌の刃が刺さった腕を庇う様子もなく、自分も観客席に叩きつけられたときの痛みが全くないことから、どうやら舞台で認識できるのは死という最終局面だけなのかもしれないとイオタは感じた。

< 234 / 398 >

この作品をシェア

pagetop