吸血鬼は淫らな舞台を見る episode ι (エピソード・イオタ)
車の下敷きになっていた隊員は挟んだ足を庇いながら大丈夫だと親指を立ててサインを送り、他の隊員達は刺さったガラスを取りながら部屋を出ていく。
もちろん肖像画の前にいた二人も声に急かされるように駆け足で向かう。
ギシギシギシ、バタバタバタと階段を駆け上がる音が聞こえてきた。
イオタに時間の猶予はなく、肖像画を押して外へ出る。
まず向かったのは車の下敷きになった隊員のところ。
頭から血を流し、脚を挟まれ、「くっ……」と声を出し切れずに苦しそうだが、意識ははっきりしている。
隊員は若く、脅えた表情でイオタを見上げた。