吸血鬼は淫らな舞台を見る episode ι (エピソード・イオタ)
森が小波のごとく揺れ、草木がザワザワと騒ぎ出す。
真っ赤なボディーのヘリコプターが下りてきて、風の原因がはっきりする。
隊員が乗ってきた迷彩色のヘリコプターとは違い、モーター音が極度に静かなうえに地上にふわりと着地した。
「ちっ、嗅ぎつきやがったか」
髭男は赤いヘリコプターを見ながら舌打ちする。
それから顎を振ると残った一人の隊員がイオタの後ろに回り、サバイバルナイフの刃を首にピタリとつける。
訓練された隊員の力量からすると、数秒、いや一瞬で首を斬り落とされるかもしれないとイオタは感じ、無駄な抵抗はしなかった。