吸血鬼は淫らな舞台を見る   episode ι (エピソード・イオタ)


かといって親しみを込めてアルファと呼んでくれる仲間はいない。


アルファは交差点の真ん中で、ぐるりと体を回転させ、“奴ら”の動きを探った。


周りは殺風景なゴ―ストタウンで高層ビル群が死んだように眠っている。


昔は世界一を誇る電気街だったらしく、奇妙なコスプレ衣装を着た店員が出迎えるコンセプトカフェなどが入った賑やかなビルが建ち並んでいたらしい。


いまでは建物の窓ガラス、タイヤが抜かれて傾いている車のフロントガラスがきれいに割られ、汚い言葉やアートディレクター気取りで描かれている落書きは、赤や黄色などで色使いは派手なのだが、寒々とした荒涼感を引き立たせているだけだった。

< 3 / 398 >

この作品をシェア

pagetop