吸血鬼は淫らな舞台を見る episode ι (エピソード・イオタ)
「やっぱり闘う運命なのかな」
イオタは若者にではなく、脳内の黒い化け物に向けて言った。
その若者は殺す価値もない、とイオタは自重を求める。
すると、脳内の黒い化け物は【血液】という項目を選んで赤い本を捲った。
以前読んで化学式に眠気を誘われて途中で挫折した『血液の不思議』という本の記述が載っている。
そんなことをしても急に血に飢えたりしない、と拒んでみせた。
さらに脳内の黒い化け物は赤い本を一旦閉じてから素早く捲りはじめた。
パラパラ漫画の手法で、一枚一枚少しずつ違った絵が描かれ、残像を利用した動く絵を見せてくる。