吸血鬼は淫らな舞台を見る   episode ι (エピソード・イオタ)


「は、廃人……」


若者は涙目になって女々しくいやいや首を振る。


「0パーセントと無理だと言いたいの?」


イオタの問いに脳内の黒い化け物は頷く。自殺なんてできないと思っているらしい。


余裕綽々な態度にイラッとした。


「この鉤爪で脳ミソを突こうかな」


トントンと人差し指でイオタが自分のこめかみを突くと、若者は失神して地べたに寝てしまう。


「さっきから何を勘違いしてるの?さっさと逃げないと本当に殺すよ」


レザージャケットの襟を掴んで揺さぶると若者は目を開けたが、「ぎょぇ~」と奇声を上げ、首を垂らしてまた気を失う。

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