吸血鬼は淫らな舞台を見る   episode ι (エピソード・イオタ)


白衣を着た若い男が舞台袖に消えると、イオタは観客席から離れ、舞台に上がり、カプセルの前に立つ。


「舞台の中だけの存在になっても、ぼくはあなただけは許せない。だって、シータがいれば現実の世界での居場所なんてどこでもよかったんだから……」


イオタはカプセルの中で眠るガンマ少佐に語りかけ、パチンと指を鳴らす。


すると、それまできれいだった水色の培養液があっという間にオレンジ色に変わった。


カプセルの中のガンマ少佐がトロ~ンとした目付きで、ゆっくり顔を上げたのは一瞬のことで、ガボガボッと口から不規則な大きさの泡を次々吐き出してもがき苦しむ。

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