吸血鬼は淫らな舞台を見る   episode ι (エピソード・イオタ)


車が停止すると、柵が横滑りして開いていく。


「わっ、魔法だ!」


男の子は感激して喜ぶ。


「まだまだ子供ね」


女は歯列の整った白い歯を見せて笑う。


砂利道を進み、車の底からボコボコと小石が当たる音がすると、女はスピードを落とす。


「タイヤで跳ね返った石が当たってるんだね」


なんとかコミュニケーションを取ろうと質問ではなく、独り言のようなことを口にしたが、「チッ」という無残な舌打ちで返された。

< 51 / 398 >

この作品をシェア

pagetop