蝉時雨
京介がしゃがんだ瞬間、
動いた空気がふわりと香る。
部屋の空気にも染み込んでいるんだろうか。
鼻先をかすめるのは昨日と同じ、
京介の香水のにおい。
それに溶けるようにして京介の声が響く。
「‥‥‥なぁ、
昨日と同じことしよう」
「え?」
予想もしていなかった言葉に
驚いて上げた顔を、京介の方に向ける。
「昨日‥って‥‥」
「公園でしたじゃん。忘れた?」
「っわ!!‥‥忘れてないよっ!!
え、なん‥‥何を‥‥」
一つも表情を崩すことなく
京介は淡々と続ける。
「だから、
キスしようって言ってんの」
「な‥‥‥っ!!」
びっくりしすぎてあたふたする私を
ヤンキーみたいにしゃがんだ京介が
下から覗きこむように見つめて、
いたずらに口角をあげた。
「‥‥‥‥‥っ」
その表情がやけに色っぽい。
でもすごく冷たくて、少し怖いとも感じた。