蝉時雨







微かな物音を感じて目を開けた。




「‥‥‥寝ちゃった」


まだ眠い目を擦りながら辺りを見渡す。
どうやらあのまま眠ってしまったみたいだ。
外はもう日が落ちて薄暗くなり始めている。

すると一階からくぐもった声が響いた。





『‥‥だから、そんなことないって!』


京介が帰ってきているのだろうか。
まだ半分寝ぼけたままの頭で
その声に耳を澄ませる。






『‥‥‥!‥‥し、‥‥て‥‥ろ?』


さっきよりもトーンを抑えているようで
何を話しているのかはっきりとは
聞き取れないものの、
誰かと言い合っているのか
声の様子からして何か怒っているようだ。






「‥‥‥涼ちゃん?」


いつもよりも少しとげのある強い話し方。
でも聞こえるのは涼ちゃんの声だけで、
どうやら誰かと電話をしているみたいだ。





それからしばらくして声が聞こえなくなった。
それを確認すると、私は一階へと向かった。






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