蝉時雨
*
微かな物音を感じて目を開けた。
「‥‥‥寝ちゃった」
まだ眠い目を擦りながら辺りを見渡す。
どうやらあのまま眠ってしまったみたいだ。
外はもう日が落ちて薄暗くなり始めている。
すると一階からくぐもった声が響いた。
『‥‥だから、そんなことないって!』
京介が帰ってきているのだろうか。
まだ半分寝ぼけたままの頭で
その声に耳を澄ませる。
『‥‥‥!‥‥し、‥‥て‥‥ろ?』
さっきよりもトーンを抑えているようで
何を話しているのかはっきりとは
聞き取れないものの、
誰かと言い合っているのか
声の様子からして何か怒っているようだ。
「‥‥‥涼ちゃん?」
いつもよりも少しとげのある強い話し方。
でも聞こえるのは涼ちゃんの声だけで、
どうやら誰かと電話をしているみたいだ。
それからしばらくして声が聞こえなくなった。
それを確認すると、私は一階へと向かった。