蝉時雨
「そんなことないだろう?」
「え~、だって。
高2の頃の彼女さんなんて
すごかったじゃんっ!!
涼ちゃんが彼女とお揃いの
ピンクのりぼん頭につけてたの見た時は
菜々子びっくりしたもん」
「あ!!あれは違っ!!
こらっ菜々子!!
もう忘れろっ!」
菜々子の話に恥ずかしそうに頬を染めて、
涼ちゃんが焦る。
その姿が可愛くて制止する涼ちゃんを
無視して話を続ける。
「他にはなんだっけ。
真っ赤な………」
「だ~!!!ストップ、ストップ!!
菜々子さん、勘弁して下さいっ」
慌てた涼ちゃんに、
後ろから抱き抱えられるような体制で
片手で口を塞がれる。
その瞬間ふわっと涼ちゃんの香りに包まれて
心臓がどっと大きく跳ねる。
私が知ってる
彼女の知らないこと。
私達だけの秘密。
圭織が知らない涼ちゃんを
菜々子はいっぱい知ってるよ。
ねぇ
菜々子の知らない涼ちゃんを
あなたはどれだけ知ってる?