蝉時雨



「そんなことないだろう?」

「え~、だって。
高2の頃の彼女さんなんて
すごかったじゃんっ!!
涼ちゃんが彼女とお揃いの
ピンクのりぼん頭につけてたの見た時は
菜々子びっくりしたもん」

「あ!!あれは違っ!!
こらっ菜々子!!
もう忘れろっ!」



菜々子の話に恥ずかしそうに頬を染めて、
涼ちゃんが焦る。

その姿が可愛くて制止する涼ちゃんを
無視して話を続ける。





「他にはなんだっけ。
真っ赤な………」

「だ~!!!ストップ、ストップ!!
菜々子さん、勘弁して下さいっ」




慌てた涼ちゃんに、
後ろから抱き抱えられるような体制で
片手で口を塞がれる。

その瞬間ふわっと涼ちゃんの香りに包まれて
心臓がどっと大きく跳ねる。









私が知ってる
彼女の知らないこと。


私達だけの秘密。







圭織が知らない涼ちゃんを
菜々子はいっぱい知ってるよ。






ねぇ

菜々子の知らない涼ちゃんを
あなたはどれだけ知ってる?







< 57 / 225 >

この作品をシェア

pagetop