蝉時雨
焦る涼ちゃんの姿を愛しく思いながら、
わずかな優越感に浸る。
涼ちゃんとの仲を今の会話でも充分
見せつけることができたはず。
どんなもんよ! と
どや顔で圭織に視線を向けると、
「何したのよ、涼太。
私そんな話初耳なんだけど」
と楽しそうに笑っている。
その表情には全く
嫉妬や怒りなんて感情は見えない。
ただ純粋に私達のやり取りを楽しんでいる。
涼ちゃんの過去の恋愛についても
私の涼ちゃんに対する態度も
気にもしてないみたい。
何よ、強がっちゃって。
ほんとは気にしてるくせに。
「‥‥‥‥っ」
悔しくてぶうっと頬を膨らませる。
“ガキとおとな”
そんな線引きを
はっきりと示されたような気がして、
より一層自分が子供じみて見えた。