蝉時雨
「あー、もう。
菜々子のせいで変な汗かいただろ。
なんか飲み物買ってくるけど、いる?」
そう言って涼ちゃんが
離れたところにある自販機を指差す。
「やったあ!
菜々子、ネクターがいい」
「あはは。言うと思った。
ほんと桃好きだなー
「だっておいしんだもん」
ほらね
涼ちゃんだって菜々子のこと
ちゃんと分かってくれてる。
「圭織と京介は?」
「俺コーラで」
「私は緑茶で。
それじゃあ私、荷物持つよ」
圭織が涼ちゃんの肩にかかった
ボストンバックをつんとつついた。
「いや、重いだろ?
俺持つから大丈夫だよ。」
「でもそれじゃあ
飲み物持ちにくいでしょ?」
確かに、
彼女が持ってきたキャリーバックも
全て涼ちゃんが持ってあげてたから、
更に1人で4人分のジュースまで
抱えるのは大変そうだ。
そんな2人のやり取りに
またむすっと頬を膨らませた。
“圭織の荷物なんて
持ってあげたりしなくていいのに”
そう喉元まで出かけたけど、
その言葉は黙って飲み込んだ。
こんなことにまで
いちいち嫉妬するなんてガキっぽいもん。