炭坑の子供たち(1)
未だ風呂に入る日はいい方で

辺りが暗くなり始めると

バックと呼ばれる共同の洗い場は

「風呂に行ってくるばい」

と、言って家を出て

そのまま外で遊びほうけていた、大勢の子供でごった返す。

風呂に行かないで、遊んでいたのがバレると

母親に、こっぴどく叱られるから

遊びで汚れた顔を、きれいに洗い

頭もタオルも濡らして、風呂に行った振りを装うのだが

近所のおばさんが、バックで顔を洗っているのを見ていて

「あんたんとこの子が、バックにおったばい」

と、必ずチクるので、もう母親にはバレバレであった。
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