炭坑の子供たち(1)
「ああ極楽、極楽」

と、頭の上にタオルを乗せ

目を閉じたまま、気持ち良さそうに、熱過ぎる湯につかっていたじいさん達も

いつの間にか、ぬるま湯の地獄となってしまったので

再び水を止めてお湯を出し、蛇口のそばに陣取って動かない。

「ここは、わしが玉砕覚悟で死守するばい」

「ああ、頼むばい」

「こせがれ共に、負けてたまるか」

さすがに、日露戦争に行ったじいさん達の士気は高い。

もし蛇口に近寄ろうものなら

洗面器でポカリと頭を叩かれるか

濡れタオルのムチでピシャリとやられ

潜って近付く者は、頭を押さえつけられて、湯船の底に沈められた。
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