炭坑の子供たち(1)
夜になると、町内の入り口辺りに

木刀を持った10人程の大人達が、たき火を囲んで、ピケと言うのを張っていたが

子供達も、大人に混じって、選挙の気分を味わっていた。

「金をやったり、貰おたりしたら選挙違反て、誰が決めたんや、いらん事するのう」

「4年にいっぺんの事やけん、金を貰うだけ貰って、入れんやったらいいんや」

「そうは言うてん、ここのモンは義理固いけんなあ、入れてやるんたい、貴重な1票を」

そんな時、向こうの方に人影が見え

5人の若者が、木刀を手に走り出すと、子供達も後に続く

行って見ると、その家のおっさんが、目を丸くして立っていた。

「何な、田中のおやじさんか」

「たまがったあ(びっくりした)ぶん殴られるかと思うたばい」

すると今度は、少し奥の方に、怪しい2つの人影が見えたので

若者達が走り出すと、2つの影も走り出した。

「こらあっ、待たんかいっ」

何でも、現金を持って、敵陣を切り崩しに来るので

町内の候補者を当選させる為に、怪しい者は追っ払うのである。

そのピケは、特に危ない、投票日当日の夜明けまで続いた。




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