Reminiscence
「フェン、どうしたのその声!」
フェンの声は普段よりも幾ばくか低い、少年らしいものになっていたのだ。
「師匠から教わったものです。喉の強化を応用して、声を変えました」
「そういう魔法があるのは知ってたけど……でもどうして?」
「ミカゲさんも知っての通り、吟遊詩人とは男性の職業ですので、詩も女性が歌うには厳しいものもあります。……つまり、そろそろ吟遊詩人の仕事を再開しようと思って」
ミカゲは、かつてフェンがネニャフルで冬を過ごしていたときに吟遊詩人の真似事をしてお金を稼いでいたのは知っていた。
「でも、お金を稼ぐ必要はないのよ?私はネニャフル議員でもあるから、お金はたくさんあるし、もし私に気兼ねしているのだったら……それこそそんな必要はないわ。家長が家族を養うのは当然でしょう?」
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