Reminiscence
ティーは少し傷ついたような顔をした。
「それは、どちらについてです?」
ティーはフェンのことだろうと決めつけているようだったが、そう尋ねた。
暗に、それなら、自分だけが追い出されるのはおかしいと言っているのだろう。
「君はまだ聞く資格を持っていない。どちらの事情も、どちらにとっても重要になる。彼らはお互いの事情を知る資格を持っている」
ティーは泣きそうにきっと唇を結ぶと、何も言わずに出て行った。
それを見送ると、アズが言った。
「俺の事情をなんでこいつに聞かれなきゃなんねぇんだ?資格を持ってるだけなら、俺はどんな事情だろうと話すつもりはねぇよ」
アズの口調は学院長相手にもまったく臆することがなかった。
もっとも、フェンも敬意をもって話したりはしないだろうと思った。
いわば、彼は自分の偽りを暴く敵でもあるのだから。
「いや、資格と言ったのは、アマランスの傷を少しでも浅くするためだ。時がくればわかるはずだと希望を持たせるためだな」
ぎぃ、と今度は重苦しい音を立てて扉が閉まり始めるのが、わかった。
「話すのも、聞くのも、二人に課せられた義務である」
どお……ぉん、と音を立てて扉が閉まった。
それと同時に魔法が部屋を駆け巡るのも感じられた。
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