Reminiscence
ティーはある立派な扉の前で止まった。
ここが学院長室なのだろう。
ティーは扉に添えつけられたノッカーを叩いた。
「ウェスティー・ド・アマランスです最後の騎士を連れて参りました」
中から返事はなかった。
しかし、かわりに扉がその見た目の重さとは裏腹に軽やかに開かれる。
奥には革製のソファに深く腰掛けた老人がいた。
その老人はフェン達に微笑んだが、そこにあるのは優しさだけではなかった。
なにかを探るような、おもしろいことに目を輝かせるような、研究者のような表情もそこにはあった。
「入りなさい」
ティーがまず入り、それからフェンとアズが入った。
「ようこそ。私はフェニチカ学院の学院長。ベルノイア。ノインと呼んでくれ」
その紹介を聞き、フェンはああ、彼もウィザードなんだ、と感じた。
それも、力の強い。ファーストネームは名乗らずとも、名は名乗ったのだから。
ノインは3人の顔を順に見て、それからティーに問いかけた。
「左の子が盗賊、右の子が契約者だね」
「はい」
ノインはふっと微笑んで手をひらひら振って追い出すような仕草をした。
「アマランス、君は外で待っていなさい。どうやら、君が聞くことのできない話をすることになりそうだからな」
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