Reminiscence
アズはどうだろう。
とくに親しくもないので読めない。
戦闘能力がないのはわかっていたが……盗みしか能力がないのなら、総合学科になるのだろうか。
ティーはこんなことを考えながら、学院長の言った言葉を極力思い出さないようにしていた。
しかし、考えていたことが一段落つくとすぐにそれを思い出してしまった。
まだ……まだ私には力がないのだろうか。
沈みがちになったところで二人が戻ってくる足音が聞こえた。
ティーはゆっくりと顔をあげて二人が来るのを待った。
王族としてのプライドから、二人を迎えにいくようなことはせめてしたくなかったのだ。
いずれ王となる身なのに、私事に振り回され弱みを見せるようなことはしてはいけないと思っていた。
二人の姿が見えると、ティーは片手をあげて挨拶した。
「よっ」
同じように挨拶を返したのはアズだけで、フェンはティーをちらと見ただけだった。
ティーはそのことを深く考えないように心掛けながら二人に話しかけた。
「学科は決まった?」
フェンとアズは何か含みのある視線を交わすと、まずアズが答えた。
「魔法科入学」
予想外の学科にティーが驚いていると、さらに追い打ちをかけるようにフェンが答えた。
「同じく」
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