Reminiscence
「ここで!?……あ、もしかして派閥の仕事とかですか?」
「いや」
旅人は首を左右に振って否定した。
「私は正式に派閥を抜けている。ただ、派閥を抜けた代償はいくらかあったがな」
「代償……?」
「ふふ、言っただろう。名前を奪われてしまったのさ。さらに性別までね」
「……?」
フェンは理解することができず首をかしげた。
「名前を失くすと自分を失う。それなりに気に入っていた気がするのだが、名前を呼んでもらった記憶が全くないのだよ。それは酷い喪失だ。名前を呼んでもらうとき、そこには人の強い感情がこもる。愛情も、友情も、憎しみや悲しみでさえ、私は貰ったものをすべて失った」
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