Reminiscence
「名前を……それを呼んでもらった記憶を失う……」
フェンは名前を呼んでもらった記憶を必死に思い出した。
フェン、と親しみをもって呼んでくれた祖父や両親。
フェンちゃん、といつも明るく呼んでくれたロッティ。
リーフェンリア、と嬉しそうに私の名前をつぶやいたランジェ。
フェン、といつも諭すように、守るように大事に呼んでくれていた師匠。
それらがすべて消えてしまう、なかったことになってしまうなんて……私には耐えることができるのだろうか。
フェンが沈み込んでしまったのを見て、旅人は明るくおどけるように言った。
「ああ、だが悪いことばかりではない。旅をして、人とうまく関わるのに演技力というのは必要になってくるだろう?自分がないかわり、誰かを演じたりするのは得意なんだ」
< 99 / 392 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop