担任は優しい旦那様
ワクワクした声で
陽菜が言う。

「今からドキドキして来た」

そう言ったのは琴羽。

どうやら、琴羽も
好きな人が居るらしい。

どんな人だろう?

とりあえず、
作るまでに時間は
あるから食休みして、
恋が持って来た
例の本をまた皆で
見ることになった。

「そう言えば、
恋と陽菜子は
好きな人居ないの?」

本に目をやりながら
琴羽が何気なく訊いた。

「いないよ」
と答えたのは陽菜子で
「気になる人は居るんだ」
と答えたのが恋だった。

『恋の
気になる人って誰?』

同じクラスの子か
それとも、
理香みたいに
別のクラスの子?

あ、もしかして、
先生だったりして。

「向かいの
クラス担任の左京靖紀先生」

お、当たった。
本当に先生だったとは……

左京先生は、
多く居る教師の中でも
若くてカッコイイ方だと思う。

「へぇ、恋って
ああいうのがタイプなんだ」

今まで黙って
聴いてた理香が言った。

「いいでしょ別に……」

恋は照れながら
プイッと顔を反らした。

理香の好きな人は
左京先生とは
違ったタイプで
爽やかな
スポーツ少年って感じだ。

『恋、
左京先生の分の
チョコも作ったら?』

昨日は友チョコしか
作らないんだ
と言ってたけど、
材料は沢山あるんだから
いいんじゃないかと思う。

「でも、
渡す勇気がないよ……」

普段は誰よりも
男前な性格なのに
こういう所は
乙女だなぁと思う。

『何も、告白まで
するわけじゃ
ないんだし……ね?』

好きな人に
それも先生に
渡すとなると
かなりの勇気がいる。

それは、私も分かってる。

マー君とのことが
バレたのは三年の時だから
一、二年の時の
バレンタインは渡すのに
緊張したのを覚えてる。

「分かった……
先生の分も作る」

明日が楽しみだ。

作り終わった時には
お昼を過ぎていたけど、
チョコ作りに
専念し過ぎて忘れていた。

とりあえず、
これで明日の
バレンタインの準備は整った。

ちょっと遅い昼食を
自分達で作って食べ、
今度は私の
部屋に集まった。

皆、
失敗することもなく
綺麗に上手く
出来てよかった。

夕飯までしばし休憩。

昼食が遅かったから
夕飯は八時頃に食べ、
十一時半に寝た。

翌朝、六時半に起き、
五人で学校へ向かった。

勿論、昨日作った
チョコを忘れずに持って。

私は帰りに
高校と実家に寄って
渡すつもりだ。

理香も恋も
無事に渡せたみたいだ。
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