担任は優しい旦那様
「佐川さんは?」

栄螺さんは
こっちが聞くと
聞き返すのね。

『二十歳です……』

話してる内に
彼女が診察室に呼ばれた。

「行ってくるね」

立ち上がり、
一番奥の診察室に
入って行った。

二十分程して出てて来た。

『お帰りなさい』

「ただいま」

ノリのいい人だ。

『お腹の赤ちゃん
大丈夫でした?』

見つけた時、
冷や汗まで流して
しゃがみ込んでだし
大丈夫なのだろうか?

「うん、大丈夫だって」

よかったぁ〜

「後一ヶ月で
出産予定日なんだ」

お腹を撫でる
栄螺さんは
"お母さん"の
顔をしていた。

『少し早いですけれど
おめでとうございます』

触ってもいいですか?って
訊いたら、私の手を
お腹にあてた。

あっ、今動いた。

「不思議よね」

私の手の上から
栄螺さんの手が重なった。

「よかったら、
出産に立ち会ってくれない?」

ぇぇぇ〜!?

私が……!?

『旦那さんは?』

敬語が外れたけど
今はそんなことを
気にしている
場合じゃない……

「さぁね、
此処四ヶ月くらい
帰って来てないんだ」

何とも言えなく
なっちゃったなぁ……

『それ、
家の旦那さんに
訊いてみてからでも
いいですか?』

困った時は、マー君に
相談するのが一番。

「結婚してたんだ……」

驚くのも無理ない。

私の身なりは
人妻って感じじゃないし
半年前に専門学校を
卒業したばかりだ。

『はい、
もうすぐ三年です』

今年のプレゼントは
何がいいかなぁ〜

「さっき、
二十歳って言ったよね?」

『そうですね』

うん、間違ってないから。

「十七で結婚したの?」

聞き方は
質問というより
確認してる感じだ。

『高二の時に
籍入れました』

"普通" じゃないのは
初めから判っている。

「旦那さんは何してる人?

そうなるよね。

『教師です』

"何処の"とは
あえて言わないでおいた。

「そうなんだ」

何となくわかっただろう。

とりあえず、
お会計するために
一階まで降りた。
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