担任は優しい旦那様
彼女の家を
知らないから
住所を聞くと
家よりかなり先だった。

「そうだ、
此処に来た時の
タクシー代幾らだった?」

どうやら、
返そうとしてるらしい。

『いいですよ』

たまたま、
彼女を見つけて
此処まで
連れて来たのは
私が勝手にしたことだ。

「でも……」

腑に落ちないらしい。

『わかりました、
此処に領収書が
ありますから
割り勘して下さい』

バックから財布を出し、
先程のタクシーの
領収書を渡した。

帰りのタクシーも
自分の家までの分は
出すことになった。

マンションの前で
停めてもらい
私は降りた。

『じゃぁ、
気をつけて
帰って下さい』

さっき、タクシーを
待っている間に
マー君にメールをした。

そしたら、
俺も一緒に立ち会うと
言い出して
那々弥さんと笑った。

「家に着いたら
メールするね」

彼女を乗せたタクシーが
見えなくなったのを
確認して
マンションの中に入った。

メールが来たのは
それから、
十五分してからだった。

『あっ、ヤバい
荷物あそこに
置きっぱなしだ……』

そう思って
どうしようか
考えてたら、
携帯が鳴った。

『もしもし』

電話の相手は
何時もの運転手さん。

『どうしたんですか?』

自分の声に
覇気がないのは
承知で聞く。

「買い物、
あそこに
忘れて行きましたよね?」

思い出したのは
今だけどね。

『ええ、それが?』

「実は、こっちで
お預かりしてるので
後で取りに来て下さい」

タクシー会社までだと
バスで四十分くらいか……

『分かりました、
今すぐ取りに行きます』

電話を切り、
玄関の鍵を閉めたのを
確認してバス停に
向かった。

今日買った物を
思い出して、
自分で苦笑いする。

『これも、
ある意味
運命なのかな?』

バスを降りて
歩きながら
小さく呟いた。

「お待ちしてました」
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