月下の踊り子



☆間奏☆



私は作業中、恰幅の良いおじさんから呼び出され、指定された場所まで向かった。


部屋に入ると数人の人が厳しい目で私を睨んでいた。


何か私が悪い事でもしてしまったのだろうか。


考えてみるが呼び出されるほど悪い事をした憶えがない。


私を呼び出したおじさんが簡潔に呼び出した用件を私に伝えた。


少し難しい言葉を使っていたけど、内容は実に分かり易かった。



来週が私の死刑執行日――。



不思議と恐怖は込み上げてこなかった。


それは「いよいよか」という諦めの感情が強かったからなのかもしれない。


一人の看守さんの顔が脳内に浮かぶ。


私が死んじゃう前に逢っておきたいな。


別れ際に伝えたい事は沢山あるけど、もう一度、彼には御礼を言いたい。


もう戻って良いと言われたので一礼してからトボトボと部屋を出る。


重苦しい空気から解放され、ドッと脱力が襲い掛かってきた。


膝が震えている。


一瞬、死刑宣告を受けても平気でいられるなんて思ってしまったけれどやっぱり怖い。


だって来週、お前は死ぬんだよと言われたのだ。


誰だって恐怖を感じるに決まっている。


それで平気でいられる方が普通じゃない。



「あ~あ、怖いな」



空を見上げながら呟いた。



「……怖いよ」



誰にも言えない泣き言を真っ青な空に向かって。




☆間奏了☆








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