放課後は、秘密の時間…
シャツを広げた手は、そのままキャミソールをまくし上げていった。

冷たい空気が素肌に直接触れる感覚に、焦りばかりが募る。


「放してっ!」


堤君を突き飛ばそうと伸ばしたあたしの両手は、彼の顔に当たって。

それが、堤君を苛立たせたのか、乱暴に肩を押さえつけられた。


その拍子に、机に頭がぶつかって鈍い痛みが響いた。


「い、や……」


声を出したいのに、弱くて小さなものしか出ない。


まるで霧がかかったみたいに、視界がかすんでいく。

少しずつ、白く染まって……


「……けて……いち…わくん……」


真っ白になった世界に最後に浮かんだのは――

市川君だった。



自分から美術室には来るなって言ったくせに、助けてほしいなんて……

あたし、矛盾してる。


『先生』


いるはずもない市川君の声。

思い出して、ふいに泣き出したくなった。


あぁ、そっか。


あたし、市川君のこと……

こんなことになって、気づくなんて――……

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