放課後は、秘密の時間…
ねぇ、市川君……


今、市川君に一番会いたい。

「先生」って、その声が聞きたいよ。


「あたしは教師で、市川君は生徒」


そう言い聞かせて、ずっと気づかないフリをしてきた。


でも、自分の気持ちは、やっぱりごまかせない。


あたし、市川君が好きなんだ……


強引で、イジワルで、いつもどこか自信に溢れてて。

だけど、本当はすごく優しいところもあって。


そんな彼に、少しずつ、少しずつ、惹かれてた。


気がついたら、市川君はどんどんあたしの心の中に入ってきてた。


だから、いつも断れなかったの。

「美術室には来ないで」って言えなかったの。


一緒にいると楽しくて。

本当は、すごく嬉しかったから。


すれ違うときだって、どこか期待してたのも。

あの甘い香りを感じるたびに、胸が苦しくなったのも。


全部、あたしが市川君を好きだったからなのに……



薄れていく意識の中で、あたしが聞いたものは、ベルトの金具をはずす金属音だった。

荒い息遣いと、身体中を好き勝手にまさぐる手。


……もう……

< 106 / 344 >

この作品をシェア

pagetop