放課後は、秘密の時間…
待ち合わせに俺が指定したのは、「花時計」という喫茶店だ。

俺達が初めてデートした時に立ち寄った場所。


時間よりも早めに向かうと、ちょうど窓際の奥の席が空いていたので、そこに腰掛けた。

この店のことを、あかりは覚えているだろうか?


しばらくして現れたあかりは、やはり赤い目をしていた。

腫れぼったいまぶたは、昨日の夜、もしかしたら、今日の朝まで泣きはらしていたことを物語っている。


「――俺はお前と別れるつもりはないから」


ハッキリと言うと、あかりは信じられないといった顔で俺を見つめた。

今にもこぼれそうな涙に、大きな二つの黒い瞳が、ゆらゆらと揺れている。


「あの頃に戻ったつもりでさ、もう一度初めからやり直そう」

「……大也……」

「まだ、間に合うから」


その言葉は、あかりに向けて言ったというよりは、俺自身に言い聞かせていたものだった。


――大丈夫だ。

俺達はやり直せる。


頭の中で、それだけを繰り返していた。


顔を両手で押さえて泣きじゃくるあかりに、ささくれだっていた心も少しずつ、元に戻りかけていた。

数日前は、壊したいと思ったその小さな体が、今は何よりも愛しくて、俺が守らなければならないもののように思えた。


だけどそれは、ただの一人よがりな思い込みでしかなかったんだ。

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