cloud×cloud【完】




「いいか、桜」






コソリと耳元で左之さんが囁く。


左之さんの声があまりにも色っぽいもんだからドキリと鼓動打ってしまう。








「伊東さんが来たら、一瞬で殺せ。」







そんな甘い感覚とは裏腹に発される言葉は恐ろしく残酷。



私に向けられた"人殺しになれ"宣言。


それには強い決意がいるわけなのだけど、生憎、私が15年間過ごした甘い時代の名残がやっぱり強いわけで。







要するには、2年ほどじゃ今まで育んでこられたら所謂、道徳を覆せない。




だけど…


私は隣にいる左之さんをチラリと盗み見る。





そんな甘い考えじゃダメ。



任せられたからには責任を持たなきゃ。










――伊東さんの暗殺。







「ま、それは伊東さんが桜の持ち場に来たときだけどな。ある程度は…俺が担うよ」











『俺が担うよ。』





間違いかどうかは知らないけど、私は勝手にその言葉を頭の中で変換した。










『俺が殺るよ』と。













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