《短編》想い人〜叶わぬ想い〜
どうして彼は人のものなんだろう?


どうして彼に先に出会えなかったんだろう?


どうして今更彼に出会ってしまったんだろう?



どうして…


あたしの心は出口の無い迷路のように、グルグルと回っていた。



「奈々ちゃん。」


そんなあたしを呼ぶ声。

でもあたしの欲しい声じゃない。


「こんな所でどうしたの?」


優しく接してくれるのは、哲哉さん。

祐介さんの友達。


「ちょっと酔いを覚ましてるんです。」


祐介さんの奥さんを知ってるって言ってた人。

要らない情報をくれた人。

そんな彼に笑顔で答えてる。
自分は、まだ感情に流されていない。


そう思うとホッとした。



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