たった一人の親友へ〜another story〜

あの日


さなは身体の傷の理由を俺に教えようとはしなかった


それ以来何事もなかったかのように過ごす俺らは


どこかちぐはぐで


微妙な距離を感じずにはいられなかった






ゆいのあの発言を聞いて以来


俺は何かあればゆいにちょっかいを出して


気をひこうと躍起になっていた


小さい背


大きい目


短く切ったさらさらの髪


くったくのない笑顔


俺に向ける視線


どれをとっても彼女に似ていた


だから俺は


“ゆい”に


恋をしたんだ






すぐ傍に手をのばせば


君はすぐ近くにいたのに


俺には勇気がなかった


この手で君を俺の欲望に染めたくなかった


誰かのものより


俺のものにしたいけど


でも傷つく怖さや


失う痛みを抱えるならば


俺は


もう二度と


君の笑顔も


泣き顔も


怒った顔も


何もかも


見たくはなかったんだよ