永劫の罪人 光の咎人
 中へ入ると、中央には丸テーブルと揺り椅子、隅にはベッドが置いてあるだけの質素な部屋だった。

 アスタロは揺り椅子に座り、二人を見上げた。
 窓からの光も手伝い、彼の顔を温かみのある好々爺に見せる。

「ワシに話を聞きたいということだが、一体なにを聞きたい?」

「はい、実はマテリア様のことで――」

 彼女の名を聞いた途端、再びアスタロの空気にトゲができる。

「あの『永劫の罪人』のことか? なぜワシに尋ねる?」

 どこから話せばいいのだろうか。
 ロンドが悩んでいると、ガストが話を切り出してくれた。

「爺さんがマテリアの友人だったと聞いた。だから彼女の過去を聞きに来たんだ」

「一体誰から、そんなことを聞いた?」

 アスタロの声が低くなる。それに気後れせず、ガストはあっさり言い切った。

「マテリア本人だ」

 口を閉ざし、アスタロはガストをにらむ。
 しばらくして、「はっはっ」とはつらつな笑い声を上げた。

「お前たちはワシをからかいに来たのか? 百年前に死んだ者から、どう聞いたというのだ」

 ためらいがちに、ロンドは二人の会話に割って入る。

「アスタロ様、実は教会で……ハミル様を甦らせる目的で、死人還りの秘薬を作ったのです。その秘薬の一部が賊に盗まれて、マテリア様を甦らせてしまいました」

「な、何だと!?」

 背もたれに寄りかかっていたアスタロが、思わず身を乗り出す。
 次第に顔は赤みを帯び、表情も険しくなっていく。

「……その話から察するに、ハミルも生き返っているんだな」

「ああ。だが、二人とも記憶が抜けている。それでマテリアから聞いた友人……アスタロについて追えば、なにかわかると思って調べていたんだ」

 アスタロは大きく息を吐き出すと、長い沈黙の後に「そうか」とつぶやく。
 どこか疲れたような、寂しそうな響きがした。

 ロンドはうっすら汗ばみながら、震えが止まらない手をにぎりしめた。

「教えてください。どうしてマテリア様が……その、ハミル様を手にかけたのですか?」

「なっ!? ロンド様、それは本当なのですか?」

 普段からあまり表情を変えないガストが、驚きで目を見張る。

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