永劫の罪人 光の咎人
   ◆  ◆  ◆


 漆黒の外套で闇に溶けこんだ男たちが、黒毛の馬にまたがり、林の木々をすり抜けて駆ける。

「チッ、まだ追ってきやがる」

 賊の一人が後ろを振り返り、舌打ちする。

「このまま例の場所へ行く! 追っ手が来たら返り討ちにしろ!」

 先頭を駆けていた賊の首領の男が叫ぶ。外套の上からもわかる、鍛えられた体。顔を見せずとも、尊大な雰囲気が一行を支配している。

 彼の威圧的な低い声は、他の男たちの士気を昂らせた。

「オウッ!」

 男たちが鋭く吼える。

 その様子を見て、集団の後方を走っていた男が、小さくため息をついた。

「おい、そこのお前。遅れているぞ!」

 隣を走っていた賊に急かされ、その男ビクターはあわてて前との間を詰める。
 顔に巻いた布の下で、ビクターは目を細めた。

(ったく、何をするつもりなんだ? この勝手に盛り上がっちゃってる野郎どもは)

 ビクターは視線を落として、己の手中を見る。そこには、ほのかに光る小瓶があった。

(この街に来たばかりだからなあ。サッパリわかんねぇ)

 気ままに旅をして、つい先日この街に着いたばかり。
 路銀が底をつきそうになったので、酒場で仕事を紹介してもらい、早速彼らに雇われた。
 男たちからは『目的地に行って、剣を振るってほしい』としか言われなかった。

(その結果がこれだもんな。教会へ盗みに入るなんて、聞いてないぞ)

 報酬が破格だとは思ったが、こういう理由だったとは。
 目前の金に飛びついた自分自身に、思わずビクターは頭を痛める。

(こんな調子だと、この街にはいられないな。このままトンズラか? はあ……活気があって楽しそうな街なのに)

 逃げ切ろうとする焦りより、何の娯楽も楽しまずに、この街を去るなんて……という口惜しさがビクターの心を占めていた。


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